9万9865台を販売して2018年のミニバン販売ナンバー1に輝いたセレナ。2019年に入っても1~3月はミニバン1位を記録していたが、4月以降はシエンタにミニバン1位の座を奪われることが多くなり、対前年比も前年を割ることが多くなった。
しかし、2019年8月1日にマイナーチェンジが行われ、販売の約7割を占めるハイウェイスターの顔がいわゆるオラオラ顔になったことで販売回復が期待されたが、伸びたのは対前年比121.3%の8月だけで、9月は9224台でミニバン3位、10月は4313台でミニバン5位、11月は4830台でミニバン5位と回復していない。
2019年1~11月の販売台数はシエンタに続く2位で、このままでは2019年のミニバン販売ナンバー1の座をシエンタに奪われてしまうこと必至だ。
■2019年1~11月ミニバン販売台数ランキング
1位/シエンタ 10万3601台
2位/セレナ 8万8534台
3位/ヴォクシー 8万2907台
(以下、詳細順位は本文参照)
なぜセレナの販売がここにきて急激に落ち込んだのか? モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説する。
文/渡辺陽一郎
写真/ベストカー編集部 ベストカーWEB編集部
【画像ギャラリー】2019年ミニバン販売ナンバー1はセレナかシエンタか?
なぜ2019年9月以降セレナの販売が落ち込んだのか?
3列シートのミニバンは、今でもファミリーカーの定番カテゴリーだ。多人数で乗車できるから、実家の両親と一緒に、3世代で買い物などに出かけられる。
3列目のシートを畳めば、4名で乗車して、なおかつ自転車のような大きな荷物も積める。
このような実用性が注目され、ミニバンの売れ行きは堅調だ。今は新車として売られるクルマの37%前後を軽自動車が占めるが、ミニバンも15%程度には達する。
そのミニバンのなかでも、安定して好調に売れている車種が日産セレナだ。標準ボディが5ナンバーサイズに収まる視界の良いボディは運転しやすく、車内はとても広い。
特に3列目のシートは、標準ボディを5ナンバーサイズに抑えたミニバンでは最も快適だ。セレナは運転のしやすさと、ミニバンで重視される多人数乗車、あるいは荷物の積載性などの機能を高次元で調和させて高い人気を得た。
しかも、セレナは2016年8月に発売され、2018年3月にはハイブリッドのe-POWERも加えている。この効果で売れ行きをさらに伸ばした。
■2019年1~11月のセレナの新車販売台数
1月/1万110台(全体2位)129.2%、ミニバン1位
2月/1万993台(全体4位)105.0%、ミニバン1位
3月/1万2420台(全体4位)82.4%、ミニバン1位
4月/5403台(全体13位)88.0%、ミニバン5位(1位シエンタ)
5月/6430台(全体10位)86.9%、ミニバン3位(1位シエンタ)
6月/8366台(全体6位)90.5%、ミニバン1位
7月/8791台(全体8位)98.5%、ミニバン2位(1位シエンタ)
8月/7714台(全体3位)121.3%、ミニバン2位(1位シエンタ)
9月/9224台(全体7位)98.1%、ミニバン3位(1位シエンタ)
10月/4313台(全体12位)67.3%、ミニバン5位(1位シエンタ)
11月/4830台(全体15位)71.4%、ミニバン5位(1位シエンタ)
※%表示は対前年同月比
しかし2019年は様相が激変する。2019年上半期(2019年1~6月)まではセレナがミニバンの販売1位だったが、7/8月はシエンタに次ぐ2位、9月はシエンタとヴォクシーに抜かれて3位、10月はシエンタ、アルファード、ヴォクシー、フリードに次ぐ5位まで下がった。11月も同様に5位となる。
2019年10/11月の登録台数(軽自動車は届け出台数)を見る時に注意が必要なのは、台風19号の影響だ。2019年10月に上陸して甚大な被害をもたらし、尊い人命が失われた。自動車を含めた産業にも大きな影響を与えている。
このほか10月1日から消費税が10%にアップしたので、日本国内で10月に販売された新車の総数は、前年に比べて25%減少した。
11月も13%減り、新車の販売状況が混乱している。したがって現状の販売データが、各車種の人気度を正確に反映させているとはいえないのかもしれない。
マイナーチェンジが行われた2019年8月は、販売の約7割を占めるハイウェイスターの顔をオラオラ顔に変えたことで、121.3%増の7714台で、登録車全体の3位、ミニバン2位と躍進した。しかし、前述したようにそれ以降は下降傾向が生じている。
■2019年8月1日のマイナーチェンジのポイント
・「ハイウェイスター」のフロントマスクを一新して、大型グリルを採用。
・「ハイウェイスター」はリアコンビランプデザインも専用となり差別化。
・全方位運転支援システムを全グレード標準装備。
・プロパイロットの機能向上を図る
・サンライズオレンジなど新色追加
なぜセレナの販売がここまで急減したのか? マイナーチェンジによってハイウェイスターの顔をオラオラ顔に変えたことで、それが逆効果となり、販売急減の原因になったのだろうか?
結論から先にいうと、ハイウェイスターの顔をオラオラ顔にしたから、販売が落ち込んだわけではない。
台風や消費税10%アップに伴う新車市場全体の落ち込みがセレナに影響を及ぼしたのが大きい。そのほか順位が下がった背景には、2019年7月以降、シエンタやヴォクシーが売れ行きを伸ばしたことがある。
特にシエンタは増加の仕方が大きく、7/8月は前年のプラス57%(約1.6倍)、9月は前年のプラス86%(約1.9倍)まで急増した。その結果、セレナの順位が相対的に下がっている。
ちなみに日産は「2018年度(2018年4月から2019年3月)ミニバン販売ナンバー1」という具合に、セレナの登録台数が多いことを宣伝に活用してきた。
日産ディーラーにセレナ急減の理由を聞いた
そこでミニバン販売の1位をシエンタに譲り渡した原因はどこにあるのか、日産販売店の営業マンに聞いてみた。
「一時期に比べると販売は減りましたが、相変わらずセレナの人気は今でも高いです。従来型セレナを使うお客様が新型に乗り替える時に、e-POWERと(運転支援機能の)プロパイロットは大きな魅力になります。
ただし、e-POWERの追加から1年以上を経過しましたので、欲しいお客様には、ひと通り行き渡ったこともあると思います。
このような事情を受けて、セレナは8月にマイナーチェンジを行い、ハイウェイスターの外観をカッコ良く変更しました。どうなることかと思いましたがお客様からの評判も上々です。ハイウェイスターは相変わらず人気で全体の約7割を占めています。
10、11月の販売が芳しくなく、8月に集中したのは、10月の消費税が上がる前マイナーチェンジ後のモデルを買っておこうというお客様が集中したことがあると思います。セレナは定期的に改良を行っているので、今後も堅調に売れ続けると思います」。
―ミニバン販売ナンバー1の座をシエンタに譲り渡すことについては?
「ミニバン販売ナンバー1という実績は、お客様に対して強い説得力があります。セレナにはe-POWERという、ヴォクシーやステップワゴンのハイブリッドとは一線を画す、晴らしい魅力があります。
これに加えて、ミニバン販売ナンバー1という売り文句があると、お客様に対して購入の判断を促しやすい面はありますね。
実際、2018年はミニバン販売ナンバー1でしたので、お客様に対して強力なアピールになりました。
このままいくと、2019年のミニバン販売ナンバー1の座は難しそうな状況ですが来年は頑張りたいと思います」。
2019年のミニバン販売ナンバー1の座は陥落!?
ヴォクシー系3姉妹車は発売から約6年、ステップワゴンも4年以上を経過したからライバル車に比べて大幅な不利はないが、先ごろフルモデルチェンジされたカローラ、新発売されたライズなどが販売ランキングの上位に入ると、セレナの順位は繰り下がってしまう。これは仕方がない。
2019年1~11月の販売台数を見ると、残念ながらセレナは、2019年のミニバン販売台数ナンバー1になることはできないだろう。
2019年1月~11月までのシエンタの販売台数は10万3601台、セレナは8万8534台とシエンタに次ぐ2位。12月の販売台数が大幅に伸びることがないかぎり、2019年のミニバン販売台数ナンバー1の座はシエンタになるだろう。
セレナは、売れ筋の価格帯が290万円以上に達する唯一の車種だから(e-POWERとスマートシンプルハイブリッドのハイウェイスターVが、セレナ全体の約6割を占める)、日産と販売店の両方にとって、粗利の多い貴重な商品だ。
■セレナの人気グレード上位3位(日産調べ)
●1位:e-POWERハイウェイスターV(35%/349万9100円)
●2位:ハイウェイスターV(24%/298万6500円)
●3位:標準ボディXV(9%/273万6800円)
セレナの売れ行きが下がれば、即座に割安な特別仕様車などを設定して、販売の回復に力を入れるだろう。
2020年に入ると、デイズルークスやノート、エクストレイルがフルモデルチェンジし、コンパクトSUVのキックス、EVのSUV・アリアなど5車種発売するが、好調に売れる価格の高い日産車は依然としてセレナだ。今後もしばらくは、セレナが日産の国内販売を支え続けるだろう。
【画像ギャラリー】2019年ミニバン販売ナンバー1はセレナかシエンタか?
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December 20, 2019 at 09:00AM
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