米クレジットカード大手マスターカードによると、今年（2019年）の米国年末商戦はオンラインの売上高が過去最高を更新した。
■ オンライン売上高18.8％増
11月1日から12月24日までの同国小売売上高（自動車を除く）は、前年同期比3.4％増だった。これに対し、オンラインの売上高は同18.8％増で、小売売上高に占める割合は14.6％になった。
米国では11月第4木曜日の感謝祭からホリデーシーズンと呼ばれる休暇時期に入り、年末商戦が本格化する。ロイターによると、ホリデーシーズンは年間の米小売売上高の約40％を占めており、小売企業にとって重要な時期。
しかし今年の感謝祭は11月28日。昨年よりも1週間遅く、この日からクリスマスまでの年末商戦期間が6日少なかった。
そこで、各社は早くから、リアルとオンラインの店舗を組み合わせ、複数の購入方法を提供する「オムニチャネル販売」を積極展開。雇用増加や賃金上昇も手伝って、ネット販売が急伸したという。
■ 配送の迅速化、米自動車市場に恩恵
米ウォール・ストリート・ジャーナルは、これが米国の自動車市場に波及していると報じている。
オンラインショッピングの急成長で、配送に使う商用バンの販売が伸びているという。昨年の商用バンの販売台数は5％増だったが、今年は19％増に達するペースで拡大している。これに対し自動車市場全体の販売はほぼ横ばいで推移しているという。
米アマゾン・ドット・コムが「プライム」の配送特典である急ぎ便の標準サービスを翌日配送に短縮するなど、米国では配送時間をできるだけ短くする動きが広がっている。こうした中、より小型で、より多用途の商用バンへの需要が高まっている。アナリストらは好調な販売が2020年代の半ばまで続くとみている。
（参考・関連記事）「アマゾン、物流コスト増で業者向け料金値上げ」
■ アマゾンの車両、街角の至るところに
その一助になっているのが、アマゾンの「デリバリー・サービス・パートナー」だとウォール・ストリート・ジャーナルは指摘している。これは同社が昨年6月に始めた宅配請負業の起業支援プログラム。その目的は同社のeコマース商品を配達する業者を増やすこと。1社当たり100人程度の従業員を雇用し、20～40台の配達車両を借り受けて、業務を行うことを想定している。
リース車両や制服、ガソリン、保険など、業務に必要なものを安価で提供。事業に必要なさまざまなサービスも用意している。アマゾンは昨年、このプログラム向けにメルセデス・ベンツのバンを2万台発注した。
（参考・関連記事）「アマゾン、宅配事業を始める従業員に最大1万ドル提供」
（参考・関連記事）「アマゾン、メルセデスベンツのバンを2万台発注」
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、アマゾンはこのプログラムで800社と配送事業契約を結んだ。これにより、現在稼働している同社の配送用バンは約3万台に上る。年末商戦時期は、同社のロゴが入ったグレーのバンが米国の街角の至るところで走っている光景が当たり前になったという。
■ 米自動車市場にとって、ありがたい成長分野
その恩恵を受けている自動車メーカーは、米フォード・モーターやゼネラル・モーターズ（GM）、欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ（FCA）、ドイツ・ダイムラー傘下のメルセデス・ベンツ。
アマゾンなどが出資する米リビアン・オートモーティブなどの新興の電気自動車（EV）メーカーにも商機が広がっているという。
米国の自動車市場は何年も好況が続いた後、ここに来て勢いが弱まってきた。こうした中、商用バンは米自動車市場にとっての、ありがたい成長分野として注目されていると、ウォール・ストリート・ジャーナルは伝えている。
（参考・関連記事）「注目の米EVメーカー、アマゾンなどが追加出資」
小久保 重信
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