前回の本欄では「ここからの下値は限定的か」と題してPBR(株価純資産倍率)1倍を下回る水準からは下値が限られると予想した。しかし、欧州のみならず米国でも新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出規制などが相次ぎ、日経平均株価は3月19日には年初から30.1%安の1万6522円まで下落した。
これはTOPIX(東証株価指数)のPBRに換算すると0.83倍程度とリーマンショック時の0.8倍に並ぶ水準である。これが当面の下値めどとみられるが、まだ前途は多難だ。新型コロナウイルスの新規感染者数は欧州、米国でそれぞれ大きな波となって増加している(下図参照)。
現在は多くの国で外出規制や海外からの入国制限が行われている。これが徐々に功を奏して、弊社では新規感染者数は欧州、次いで米国でも1~2カ月の間にピークを迎えると期待している。
しかし、こうした感染症に対する人々の活動制限は、企業の営業活動、工場の生産活動、小売業の販売活動を著しく低下させるという代償を払っている。 新規感染者数がピークを過ぎてもすぐに元のような経済活動が可能になるとは考え難く、今や新型コロナウイルスは雇用と企業の存続を脅かすものとなっている。
それに対し、過去の金融危機の対策を参考にして各国の中央銀行、政府は早急に対策を講じている。企業が活動を継続できるように資金を供給し、損失で破綻しないように会計に柔軟性を持たせ、雇用が失われないように援助するなどさらなる支援政策も期待できる。
それでも、企業収益はここから大きく落ち込むことは避けられないであろう。現在の業績予想では、日本企業の売り上げの落ち込みは2020年6月に最悪期を迎え、その下落幅はリーマンショック時に並ぶとみている(右図参照)。
その後、新型コロナウイルスの感染が終息に向かえば初めて支援政策が効果を発揮して回復に向かうとみている。それまでは投資家にとっては試練の時になりそうだ。
本欄では引き続き、日本株の下値は健全なバランスシートで支えられており、業績が来年にかけて回復基調になったときには上値余地があると考えているが、そのタイミングは非常に流動的である。
現在、日本株に投資する場合には、三つの銘柄群が考えられる。十分な現金を持ち維持可能な高配当利回りの銘柄、今回の急落で大きく売られた業界一番手銘柄、そして新型コロナウイルス終息後の世界で活躍しそうな銘柄である。
投資家の見方、リスク許容度によって投資できる銘柄は異なるが、銘柄分散と時間分散を行ってこの難局を乗り切ってゆきたい。
(UBS証券ウェルス・マネジメント本部ジャパンエクイティリサーチヘッド 居林 通)
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April 09, 2020 at 02:25AM
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