アメリカ大統領選挙で、歴史的な勝利を確実にしたジョー・バイデン氏とともに注目が注がれる人がいる。次期大統領夫人(ファーストレディ)となるジル・バイデン博士(69)だ。
副大統領夫人(セカンドレディ)時代も教育者としての仕事を続けたことから、自身のキャリアと政治家の妻の仕事を両立するまれな例と紹介するメディアもあった。
また、2020年8月のCBSニュースのインタビューでは「ファーストレディになっても教え続けたい」と明言。そのことが話題になると「教えることは私の仕事ではありません。私そのものなんです」ともツイートしている。
英語教師として
大統領選挙のキャンペーンサイトやPolitico、BBCなどによると、ジル氏は、1951年、ペンシルベニアにルーツを持つ中流階級の家族の元に、5人姉妹の長女として生まれた。
ジル氏は1970年に一度目の結婚をしたが。その生活は長くは続かなかった。そして、ジル氏が大学を卒業した1975年にジョー氏と出会ったという。
きっかけは、それ以前にモデルとして働いていたジル氏の写真をみた、ジョー氏の「一目惚れ」だったという。ジョー氏の兄弟からの紹介で、当時大学生だったジル氏が最初に発した言葉は「どうやってこの電話番号を知ったの?」だった、とツイートで明かしている。
ジル氏は1977年、当時上院議員だったジョー氏と2度目の結婚をした。
ジョー氏は上院議員の初当選直後、最初の妻と幼い長女を1972年に自動車事故で失い、その後はシングルファーザーとして2人の息子を育ててきた。ジル氏との結婚の後押しをしたのは、その2人の息子だったという。
ジル氏は結婚後に一度仕事から離れ、1981年に娘を授かった。「アシュリー・ブレイザー」という彼女の名前は、兄たちが付けたという。
その後、ジル氏は仕事に復帰。高校の英語教師、精神科病院での教育担当、コミュニティカレッジ(公立の2年制大学)の講師など、教育に関連する仕事を続けながら、2つの修士号を取得。2007年には55歳でデラウェア大学で教育分野の博士号も取得している。博士論文のテーマはコミュニティカレッジに関するものだった。
夫が副大統領候補として選挙キャンペーンを行っていた2008年にも、ジル氏はデラウェア州のコミュニティカレッジで、週4回、フルタイムで英語を教える仕事を続けていた。
セカンドレディ時代もコミュニティカレッジで教鞭
ジョー氏が副大統領を務めた2009年〜2017年にもジル氏は自分の仕事を続けた。
Politicoは2008年の記事で、セカンドレディの役割以外に有給の仕事も続け、自身のキャリアと政治家の妻の仕事を両立する稀有な例となると紹介している。
ホワイトハウスの公式サイトでもジル氏は「Dr. Jill Biden(ジル・バイデン博士)」と表記されている。Dr. は彼女にとって好ましい敬称だという。ワシントンD.C.近く、バージニア州のコミュニティカレッジで職を得て、英語を教え続けていることが紹介されている。
2010年には、オバマ大統領(当時)とともにコミュニティカレッジに関する史上初のホワイトハウスサミットを主催。低所得層や移民・難民、人種的マイノリティなどの家庭出身の子どもたちにとって、費用負担が小さく通いやすいコミュニティカレッジが果たす意義を訴える仕事にも情熱を注いでいた。
また、当時ファーストレディだったミシェル・オバマ氏と共に、2011年には退役軍人とその家族へに対して教育や健康、雇用などの支援体制を強化する活動「ジョイニング・フォーシズ」を始めた。
ジョー・バイデン氏の長男、通称ボー氏(2015年に死去)も2003年に陸軍に加入し、2008〜2009年にイラクに派遣された。2012年には子供向けの本「忘れないでください、神は私たちの軍隊を祝福します」を出版したが、これは軍の家族となった孫娘の経験に基づいたものだった。
また、乳がんに関する啓発教育に力を注いでいることでも知られている。
ジル氏の4人の友人が相次いで乳がんと診断されたことをきっかけに、1993年、ジル氏はデラウェア州で非営利団体「バイデン・ブレスト・ヘルス・イニシアチブ」を設立し、会長となった。デラウェア州などの女子高校生に対して、乳がんの早期発見の重要性についての啓発教育を行っている。
「サプライズ好き」
また、ジル氏はサプライズに情熱を捧げていることでも知られている。
最も壮大なものは、セカンドレディ時代、副大統領用の飛行機エアフォース2内でのこと。ジル氏は、海軍の補佐官の助けを借りて頭上の荷物入れに忍び込み、乗り込んできたスタッフを驚かせることに成功したというエピソードも自ら明かしている。
2019年に出版した回想録では「ホワイトハウスは真面目な場所で、真面目な人々が真面目な仕事をしている。注意しないと、あなたを挫折させる可能性がある」として、サプライズを仕掛けた狙いについても語られている。
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