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トヨタが販売台数の“前提”を発表 21年3月期は2割減、年明けの回復を想定 - ITmedia

 トヨタ自動車は5月12日、2021年3月期の連結販売台数の見通しを前期比21.9%減の700万台とする“前提”を発表した。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大による生産や販売への影響が見込まれることから、市場の動向を予想することは困難になっており、地域別の販売台数計画の公表は見送った。事業計画の策定に苦慮しながらも、一つの基準を示した形だ。

2月に発売した新型「ヤリス」

営業利益は8割減、黒字確保目指す

 20年3月期の連結販売台数は、前期とほぼ横ばいの895万8000台。新型コロナ感染拡大によって、12万7000台減の影響があったという。グループ総販売台数は1045万7000台だった。

 20年3月期は新型コロナの影響は大きく出ていないが、今後は生産や販売の落ち込みが予想される。21年3月期は、連結販売台数700万台を前提として、売上高が19.8%減の24兆円、営業利益が79.5%減の5000億円とする連結業績予想を公表。決算説明会で近健太執行役員は「市場を見通すことが非常に難しい中で公表した」と明かした。

 販売台数については「4月を底として徐々に回復し、年末から年初にかけて前年並みに戻る」(近執行役員)として策定。具体的には、4〜6月で前年同期比6割、7〜9月で8割、10〜12月で9割の水準となり、その後戻っていくという前提で計算している。

 豊田章男社長は、業績予想の公表について「自動車産業は裾野が広く、及ぼす影響が大きい。一つの基準を示すことが必要だ。それがあることで、関係各所の皆さんが何かしらの準備ができるのでは」と説明。今後も必要な情報を共有しながら、計画に近づけられるように取り組む方針を示した。

21年3月期の販売台数は「前提」を公表(出典:決算説明会資料)

 一方、販売台数、営業利益ともに大きな落ち込みは避けられない。豊田社長も「コロナショックは(08年の)リーマン・ショックよりもはるかにインパクトが大きい」と見る。リーマン後の09年3月期は営業赤字に転落している。厳しい状況だが、「販売台数はリーマン以上の減少が見込まれるものの、黒字確保を見込んでいる。これを達成できれば、これまで企業体質を強化してきた成果といえる」と語った。

 その営業利益の見通しを見ると、販売台数減少の影響で1兆5000億円減を見込んでおり、減益幅の大部分を販売不振による要因が占める。一方、為替変動を除くと、販売台数以外の影響による利益の増減はゼロの見通し。これまで積み重ねてきた原価低減などの取り組みを続けることで、台数減の影響をカバーし、黒字確保を目指す。

21年3月期、連結営業利益見通しの増減要因(出典:決算説明会資料)

「国内生産300万台」で守ってきた技能と人材

 決算説明会で豊田社長は、トヨタが維持してきた「国内生産300万台」体制と、今回の新型コロナによる社会の変化の関係性についても述べた。

 トヨタは海外での販売拡大に伴い、現地生産も増やしてきたが、サプライチェーンと雇用を守るため、国内300万台という体制を「石にかじりついて守ってきた」(豊田社長)という。

決算説明会でスピーチする豊田社長。説明会はオンラインで開催した

 今回、医療現場で必要となる物品が不足していることが明らかになると、トヨタをはじめ、多くのものづくり企業が医療用フェイスシールドやガウンなどの生産や寄付に乗り出した。トヨタがこういった活動ができた理由について、豊田社長は「国内300万台体制を維持してきたからだ。世の中が困ったときに必要なものを作ることができる技能と人材を守り続けてきた」と説明する。

 その上で、「守り続けることは決して簡単なことではない。昨今、(国内生産などをやめることで)業績をV字回復させた企業が評価されることが多い。しかし、どんなに苦しい時でも、技術と技能を持った人材を守っている企業を応援できる社会が、今こそ必要ではないか」と強調した。

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May 12, 2020 at 03:00PM
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